世界は考え方でどうにでもなる

社内SEからジョブチェンジし、コンサルタント見習いです。「人間を科学する」ことに興味があります。

世界遺産ブームについて色々考えてみて、僕たちはどう行動すべきか。世界遺産とは

 最近世界遺産が流行っているようです。世界遺産を見に行って人は何しているんでしょうか。何を感じているんでしょうか。前々から疑問でしたが、観光地化して逆に被害が出るとか聞いたような気がします。心無い人がごみを捨てたり…傷つけたり持ち帰ったり。世界遺産をなんだと思ってるんでしょうか。

しかし、お前はどうなんだと聞かれたら、はっきり答えられません。貴重なんだからとかぐらい。僕自身も世界遺産に詳しくありませんでした。。

 

 僕は世界遺産は好きです。ただ、ブームに乗っかって好きなわけではないと自分では感じていますが、どこがどうということが分からずもやもやしています。好きなことは徹底して詳しくなりたいと思う性分なので、分からないというのは悔しいです。

だから、自分にとって世界遺産とはなんだと思うか、考えをまとめようと思います。個人的にですが、今のブームは間違っている気がしてなりません。

 

 

 

 世界遺産登録までの流れ

 

①条約締約国の推薦

 国内の世界遺産候補物件リストの中から、条件の整ったものを世界遺産委員会に推薦。何せ年2件までしか出せないらしいですからね、確実に登録できそうな物件を出さないと枠が無駄になっちゃいます。

 

②専門機関による調査

文化遺産は国際記念物遺跡会議(ICOMOS)、

自然遺産は国際自然保護連合(IUCN)が調査。

 

世界遺産委員会の審議、決定(年1回)

専門機関からの報告書をもとに世界遺産リストに登録するかどうかを決定します。

登録されるには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている登録基準((ⅰ)~(ⅹ))のいずれか一つ以上に合致するとともに、真正性(authenticity )や完全性(integrity)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制が整えられていることが必要です。

(「世界遺産の登録基準」よりhttp://www.unesco.or.jp/isan/decides/

 

 

世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約 通称:世界遺産条約

(1975年12月17日発行、1992年9月30日日本について発行)

 

 世界遺産は、1960年代エジプト政府のアスワンダム建設によるナイル川流域にあったヌビア遺跡水没の危機から、移築して保存し救済しようというユネスコのキャンペーンから始まりました。そのとき、「人類共通の遺産」という世界遺産条約基本的な考え方が広がりました。

【目的】文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とする。

【保護対象】記念工作物、建造物群、遺跡、自然の地域等で普遍的価値を有するもの(第1~3条)。有形の不動産が対象

【物件数】2013年11月現在で981件

文化遺産:759件、自然遺産:193件、複合遺産: 29件(締約国は190か国)

文化遺産…顕著な普遍的価値を持つ建築物や遺跡など

自然遺産…顕著な普遍的価値を持つ地形や生物多様性、景観美などを備える地域など

複合遺産…文化と自然の両方について、顕著な普遍的価値を兼ね備えるももの

世界遺産委員会】任期6年

5地域のバランスを配慮して選出された21か国(日本は2015年に任期終了)。毎年6~7月に会合し2014年はドーハ(カタール)で開催予定。

 

 

 

世界遺産ブームについて

 

 「世界遺産の普及啓発と教育」の調査によると、日本の世界遺産の話だが、

1.世界遺産登録による観光効果は、今まで著名な観光地ではなかった地方の中山地や島において顕著である。

2.すでに有名な観光地では、世界遺産登録の効果が現れず、観光客が減少している事例がある。

3.世界遺産登録により観光客が増加したが、その後減少している場合があり、登録効果の持続性の維持が課題である。

4.世界遺産登録後に観光客が減少したが、その後上昇した場合があり、その要因として、観光施策の効果などの世界遺産登録以外の要因が考えられる。

 

とある。つまり、注目されてなかったとこは急激に観光客が増えるし、元から有名なら変化なし、一過性のところもあり、宣伝で遺産登録関係なく増えるところもあると。

 しかし、グラフを見ると、全体的に近年増加しているように僕には見えました。やはり世界遺産は人気が出てきていると考えられます。そのグラフをこちらに貼れない(貼る技術がない)ので、(「世界遺産の普及啓発と教育p11~12」http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/pdf/071201.pdf)から見てください。

 

 世界遺産の現状としては、もうすぐ1000件を超えるということから、登録の基準が厳しくなっているらしいです。顕著な普遍的価値と真正性の十分な説明が、求められるようになっています。真正性は、本物であることを意味します。建築物の歴史的芸術的価値が本物かどうかという意味です。また、世界遺産登録運動が多様化する中で、世界遺産の輝かしさだけに注目し、その価値が十分に周知されないという点も指摘されています。登録の目的が、経済効果だけになっていると思われます。

 そして、1990年代に入り、普遍的価値が十分に認知されないせいだろうか、ツーリズムによる景観破壊、生態系の切断などの被害を受ける世界遺産が増加したことがあると言われています。そのことから、ユネスコ世界遺産教育事業を1994年から開始しました。1992年の危機遺産の突出も、一因と考えられます。

 

 やっぱり、ブームは経済効果を狙ってテレビなどが取り上げたせいなんでしょうか。世界遺産を守るために、またブームで終わらせないために、教育機関で世界遺産の価値を教えるということがまず進められるべきだと思います。世界遺産に訪れる人々が、そこがいかに貴重であるか理解していれば、自然と振る舞いは良くなるでしょう。

 

 

世界遺産教育について

 さて、ではその世界遺産の教育とはどんなものでしょうか、ちょっと調べてみました。

 世界遺産教育は、

①それぞれの世界遺産について学習する世界遺産についての教育」

世界遺産を保存・継承する意義・方法を学習する世界遺産のための学習」

世界遺産を切り口に「環境」「国際理解」「平和」「人権」といった世界的諸問題を学習する世界遺産を通しての教育」

に分類されます。

 奈良では、地域学習→世界遺産学習→環境・国際理解・平和・人権教育→ESD(Education for sustainable development)*1と発展的に体系づけられていました。僕も、このような学習を通して、子どもが世界遺産の理解を深めていくのが望ましいと思います。

 

世界遺産は、そこで住民が生活している「生きている遺産」であることが多い。遺産の保存と、住民等の関係者の福利、世界遺産に関わる経済活動の3つの調和の上に成り立っているのです。

 

 

まず世界遺産を知ろう。少なくともなぜ世界遺産に登録されたかを知るべき

 ここまで、世界遺産の現状や教育を調べてきて、ひとつ分かりました。それは、今の世界遺産ブームは、観光事業による経済効果を狙ったもので、歴史的価値や普遍的価値の認知を広めることは二の次である、ということです。要するにビジネスに利用(踊ら)されちゃってるということでしょうか。そのため、価値を知らない人間が荒らしていく。

 これを改善するには、やっぱり「世界遺産について教育」することだと思います。

 でも難しいですよね、中学や高校でも修学旅行で京都とか行くと思うんですけど、よく理解できないから遊んで終わってしまったり。大人になってからようやく興味出てきたりします。そこは、今後の課題として、大人の人間が海外の遺産を見に行く場合は、その遺産について事前に学習しておいてほしいと思います。

 少なくともなぜ世界遺産に登録されたのかということを背景から知れば、普遍的価値というものが本当に理解できるんじゃないかと思います。僕はそのようにするつもりです、自分の楽しみのためにも。

 

*1…持続可能な開発のための教育(ESD)。持続可能な開発は、未来のニーズを損なわないように、現在のニーズに適合することを追求することとされ、また、ESDは、全ての人々が持続可能な未来の実現に必要な知識、技能、生活態度、価値観を身につけることができる教育・学習を意味します。

 

 

 

《参考》

世界遺産とは|公益社団法人日本ユネスコ協会連盟http://www.unesco.or.jp/isan/about/

世界遺産条約|外務省」http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/kyoryoku/unesco/isan/world/isan_1.html

世界遺産の普及啓発と教育」http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/pdf/071201.pdf