世界は考え方でどうにでもなる

社内SEからジョブチェンジし、コンサルタント見習いです。「人間を科学する」ことに興味があります。

東洋と西洋のファッション、作る段階からの意識の違い(滝沢直己氏より)

 現在ユニクロのデザインディレクターである滝沢直己氏の話を受け、西洋と東洋というものについて、ファッションの「さらす/覆う」の点から改めて違いというものを感じた。

 

いままで西洋と東洋の違いについて様々な面からすでに論じられているが、ファッションの作る段階からの意識の違いに滝沢氏が目を付けたのはすごいと思う。

 

 西洋のファッションは、1858年シャルル・フレデリック・ウォルト(Charles Frederick Worth)がクチュール店「ワース・エ・ホベルク」を創設したことから始まったとされている。ウォルトは皇室ご用達のドレスメーカーとして有名となった。また、これまで分業であったシステムを、ウォルトは自身で管理して一貫して行うようにした。1870年にナポレオン3世の帝政が崩壊すると、ファッション業界では絶対権力であった皇帝がいなくなり、デザイナーがファッションの流行を作るようになった。そうして、デザイナーという職業が誕生した。

 

 20世紀に入ると、ポール・ポワレがコルセットを無くしたファッションを提案した。また、東洋的なものを取り入れるオリエンタリズムが現れた。192030年代から大量生産時代になり、モダニズムの影響でファッションも直線的でよりシンプルになって、サイズの標準化も進んだ。女性の社会進出もできるようになり、機能性を重視した服も求められるようになった。40年代前後には、アメリカンファッションが誕生した。クレア・マッカーデルは、スポーツウェアをベースとした着心地の良さを追求した。50年代はクリスチャン・ディオールをはじめとした有機的な曲線を表現したものが現れた。このあたりから様々なシルエットが発表されるようになり、「Hライン」「Aライン」「チュニック」「Yライン」「マグネットライン」など50年代はシルエット時代であった。しかし、ディオールが1957年に他界したことでシルエット時代に終焉が近づいた。

 

 60年代は、若者文化が登場する象徴的な時代である。若者が自分で服を選び、デザイナーからではなく、ストリートからファッションの流行が生まれたのである。代表的なのが、ジーンズとミニスカートである。日本では、1967年のツィギーの来日によってミニスカートが大流行した。60年代後半の特徴は、機能美を追求するものであった。もはやシルエットの変化だけでは多様化する消費者のニーズに応えることはできず、様々なスタイルが生み出されるようになっていった。そして70年代、「多様化」の時代になっていく。デザイナーが自由にコレクションを出し、消費者も自由に選んで着ることがファッションとなった。

 

多様化の時代の中心にいたひとりが、日本人のケンゾー(高田賢三)である。ケンゾーは、ハイファッションの世界に伝統にとらわれないコレクションを発表し、話題を呼んだ。そうしてファッションショーはコレクションの発表というより「ショー」の意味合いが強くなっていった。

 

80年代ではトレンドは消失し、スタイルの時代に変化していった。日本ではポストモダンの中で消費者は「他とは違うもの」、「自分だけのスタイル」を求めていた。DCブランド(デザイナーズ&キャラクターズブランド)が生まれ、有名なのがコムデギャルソンやヨウジヤマモトである。

 

90年代に入ると、より有用性を重視した企業戦略的なデザインが増え、ファッションのグローバル化が進展する。IT技術の導入により、無駄を省き利益を上げることが目的となり、ファッションはビジネス化していった。

 

 

東洋のファッションが西洋に与えた影響は大きい。滝沢氏は、イッセイミヤケグローバル化したらまったく売れなかったという話をされていたが、日本と西洋の違いを考えるとやはりグローバリゼーションはカギとなると私は思う。

 

東洋のファッションの特徴は着物である。これは、デザイナーが考えたものではなく、民間から生活の中で生まれた実用的なファッションで、長い年月を経てまさに機能性を重視した結果だと思う。逆に西洋は生活に基づいて生まれたファッションというものはなく、デザイナーによって常に作り出されていた。当時は受け入れられないものでも、グローバル化することでのちに認められることがある。

 

滝沢氏の話を聞いて、ファッションや考え方というものは、時代によって常に変化しているものだと改めて感じることができた。特にここ30年のあいだでファッションを含めいろいろなものがコンパクトになっているという滝沢氏の分析が興味深かった。昔は絶対的なものが存在し、それ以外のものは認められなかったが、現在、何事においても絶対的な存在というのがなくなっていると思う。これから先、よりコンパクトになってどんどん多様化したら、生産側は新たな対応を考えなければならないと思う。時代の大きな流れを読むことが大事だと感じた。

 

 

 参考

 

DROP TOKYO 日本のファッションが西洋のファッションに与えた影響」http://droptokyo.com/post/archives/14

 

FASHION PRESS ファッションの歴史」http://history.fashion-press.net/